
17日にフィラデルフィアで、ブルース・スプリングスティーンを観ました。
フィリーはニュー・ジャージー州から川を越えてすぐに位置しますので、ブルースの地元同然の街。
タワー・シアターは築80年近いという伝統のある劇場で、ブルースは「Born To Run」ツアーのときに4夜連続で出演したという付き合いの長い会場です。
Setlist:
My Beautiful Reward/Reason to Believe/Devils & Dust/Youngstown/Empty Sky/Black Cowboys/The Iceman/Incident on 57th Street/Part Man, Part Monkey/Maria's Bed/Silver Palomino/Reno/Wreck on the Highway/Real World/The Rising/Further On (Up the Road)/Jesus Was an Only Son/Leah/The Hitter/Matamoros Banks
(encore)/Ramrod/Land of Hope and Dreams/The Promised Land/Dream Baby Dream
コンサート評を「DIG」誌などに書く予定なので、ここでは簡単な感想だけ記します。
同じソロ・ツアーといっても、日本にもやってきた「トム・ジョード」ツアーとはまったく異なるもので、新鮮な驚きがいっぱいの2時間20分でした。
ソロという利点を生かして、様々な試みを行っています。そして、その試みを30数年培ってきたミュージシャン/バンドマンとしての高い能力が支えているのです。
とにかく、足踏みオルガンを弾きながら歌う「My Beautiful Reward」とまったくのデルタ・ブルーズに変身させて、床を踏み鳴らす音とハーモニカだけでヴォーカルを歪ませて歌う「Reason to Believe」のしょっぱな2連発で、こりゃたまげた!と圧倒されました。
ギターがうまいのは言うまでもなく、チューニングを変えたギターを取っ替え引っ換えしますが、ライン・インされたエレクトリック・アクースティックという楽器の特性を知りつくしての演奏であるのが、ただのフォーキーではないところ。
(ソロですが、新作からの幾つかの曲では袖に隠れたピアノ・テク担当のクルーが弾くシンセが背景を染めます)
そして、今回たっぷりフィーチャーされるピアノ演奏が予想以上にうまく、その弾き語りも実にいい。「Real World」が特に素晴らしかった。
また、「Devils & Dust」からほとんどの曲を披露しましたが、どれもレコード以上に良く、「Maria's Bed」がライヴ映えするのは予想通りですが、「Reno」と「Leah」も光っていましたね。
一ファンとしては「Racing In The Street」か「The River」のピアノ弾き語りヴァージョンを聴きたいところでしたが、「Darkness」のアウトテイクで「Tracks」で陽の目を見た「Iceman」の初めてのライヴ披露!という大事件があったので、贅沢は言えんでしょう。
アンコールでのアクースティックでの「Ramrod」も初登場でした。
最後は噂のスーサイド(アラン・ヴェガ)のカヴァー「Dream Baby Dream」を再び足踏みオルガンで歌い、途中からシンセがかぶさると立ち上がり、マイク片手に「僕が見たいのは君の笑顔だけなんだ」というリフレインを歌いながら退場。
その曲はデイヴィッド・リンチ映画の挿入歌のようなムードを持った曲なので、なんともいえない不思議な余韻を残してコンサートは終了しました。
なお、直接的な政治的発言は、「Part Man, Part Monkey」の前に幾つかの州で宗教右派の圧力によって学校で進化論を教えるのをやめている問題に触れ、「ニュー・ジャージー州では俺たちは進化論を信じている。それが俺たちの唯一の希望だ」と発言して喝采を受けたのと、「Matamoros Banks」の前に「人情ある移民政策をとる勇気を持った大統領が必要だ」と語った2カ所だけでした。
しかし、ほとんどヒット曲を歌わずに、休憩無し140分コンサートをやってしまえるなんて、他のアーティストでは考えられないこと。どの歌にも彼の一貫した哲学や政治観、社会へのヴィジョンなどが反映されているからでしょうし、同時にそれに耳を傾けようとする聴衆との堅固な信頼関係を30数年で築いてきたからでしょう。
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